2023年7月15日、岩手県洋野町にて開催されたJAPAN UNI SUMMIT vol.0に参加してきました。
”北三陸から、世界の海を豊かにする”をミッションに掲げ、脱炭素と持続可能な水産業の実現に取り組む催しには、漁師や流通関係者、飲食店経営者やシェフ、研究者や駐日オーストラリア大使館公使など、多彩な顔ぶれが集まり、未来に向けたディスカッションと課題の共有が行われました。
発起人である北三陸ファクトリー代表の下苧坪さんからは、豊かな海藻が生い茂っていた故郷洋野町の海の「藻場」が失われ、海の砂漠化である「磯焼け」が広がったことで、アワビやサザエ、ウニなどの漁獲高が激減していること(1950年に2000tあったウニの漁獲高が、現在はわずか100tとのこと)、この現象は洋野町だけでなく、日本各地、世界でも大きな問題になっているにも関わらず、その事実はほとんど一般に知られることがなく、このままでは海の環境悪化と同時に水産業の衰退にもつながる、というお話しがありました。
ウニは英語でSEA URCHIN(海のわんぱく小僧)と言われるくらいなんでも食べてしまうそうですが、実は温暖化で海水温が上昇するとウニの活動が活発になり、餌である海藻を食べつくしてしまい、藻場が減少してしまいます。藻場がなくなると海藻を餌としているアワビやサザエが生息できず、魚の産卵場所もなくなってしまうため、磯焼け(海外でもISOYAKEで通じるそう)が広がり、海藻を食べられない中身のない廃棄物同然のウニばかりが増えて、海が砂漠化してしまうのだそうです。
そこで、下苧坪さんは北海道大学と協力し、ウニ再生養殖に取り組み、天然の海藻を食べさせた高い価値を有したキタムラサキウニを安定的に育て、一番実入りの良い状態で出荷する仕組みをつくりあげました。この仕組みを世界に広げたい、ウニを通じて世界の海の豊かさを取り戻す重要性を知ってもらいたい、という情熱には大いに共感させられました。
ウニサミット前半では、検討課題であるUNIversal Agendaを共有するため、磯焼けの原因やメカニズム、オーストラリアでの状況と研究について専門家から解説がありました
また、ミシュラン三つ星レストランの生江シェフからは、漁業者に問題を押し付けるのではなく、食べ手も理解することが大事。既存のサプライチェーンでは、各プレイヤーがお互いの環境や課題を意識せず、量を求めてしまいがちだが、質を追求することこそがサスティナブルに繋がる、という言葉には大いに納得。自分のできることは何なのかを考えさせられました。
後半では、藻場再生・資源管理・消費者・次世代と4つのテーマに分けてグループ討議が行われ、UNIversal Agendaを自分ごと化し、具体的なアクションプランを創出しました。
参加者が一体感を持ち、議論が白熱したところで会場を移し、懇親会のスタートです。Table For Sustainability ~北三陸アクアガストロノミー~と銘打ち、洋野町の「うに牧場」で育ったウニを中心に、水産資源の魅力とおいしさを体感すべく、地元シェフや東京の寿司職人による極上の料理に舌鼓を打ち、会場の熱気は高まるばかり。この美味を未来へ繋ぐことを誓ったのでした。
今回のウニサミットは、多種多様なメンバーが集まり、様々な視点で議論、課題を共有できたことで、それぞれの立場や利益を優先するのではなく、協業していくことが非常に重要だと感じさせられました。
ウニの再生養殖や藻場再生の活動をきっかけに、世界の海が豊かに戻り、ブルーエコノミーが促進されること、今ならまだ間に合います!日々口にする食材のこと、少し深く知るだけで行動が変わると思います。未来のため、みんなで海の森を育む活動、していきましょう。
ウニサミット、来年は鎌倉開催とのことで、期待が高まりますね! (漁業ブ理事:松井香保里)